引越しをする際の注意事項、第一条は「大切なものは自分で梱包すること」。これは、ざっくりした主婦を母に持つ自分が身に沁みて感じていることです。父が転勤族でしたので、子どもの頃に数度の引越しを体験しました。そのたびに心の注意事項は増えていきましたが、それでも最初の引越しで得たこの教訓にまさるものはありません。
うちの母は、よく言えば思い切りよく、悪く言えばデリカシーなく、不必要と判断したものをビシバシと処分して引越しの荷物を減らしていったのです。当時は小学生でしたので、自分の荷物だけは自分で梱包しましたが、それ以外の家族共有のものや、茶の間やキッチンなど共有スペースのものは母の担当でした。今思えば、父は仕事で忙しく、一人で引越しの準備をしなければならなかった母は大変だったと思うので、納得できないこともないのですが、なにぶん子どものことで、引越しの先で荷ほどきをしていて、クリスマスツリーがなくなっていることに気づいたときには本当に大ショックでした。よくあるプラスチック製の、それほど高価ではないツリーですが、それにしても、自分が物心ついたときから家にあり、毎年クリスマスが近づくと家族で飾りつけをし、たくさんの思い出がつまったものでした。
それが原因で引越し早々母と大ゲンカになりました。その他にも、家族の写真や学校の文集など、自分の感覚では「捨てるなんてあり得ない」というものが数々処分されておりました。「自分のことは自分で」、特に「大切なものは絶対自分で」という注意事項が心に刻まれ、自分がちょっと大人になった瞬間だったのかもしれません。